備忘録、的なもの

本との日常 購入日記その他

2023年の蒐書総括(3/4) ヤフオクの活用について

③色々と本を集め周辺知識について調べたり聞いたりしていくうちに、大体の相場や本の珍しさ、署名の真贋についての判断がしやすくなり、それなら手を出して大丈夫だ、もしくはやめるかといった判断が出来やすくなりました。

ヤフオクでは写真と説明文が全てで、実際に物を手に取ってみれるわけではないため、判断に迷うことがよくあります。私なりに何となく気をつけている点を以下にまとめました。

まずそもそも、その本の付属品(帯、カバー、函があるのかどうか、封入ペーパー・付録などがあるかどうか)について知っていないといけません。

帯については贋帯(「夜と霧の隅で」や「フローラ逍遥」などが有名)ではないかどうか、違う版の帯でないかどうか(例として三島由紀夫の「愛の渇き」など。また、最近の本でも映画化や賞受賞などで帯の文句が簡単に変わる)を知っておく必要があります。

また、見たことのない限定版であったとしても、それが実際に市販されたもしくは作者の手による限定版なのかどうか。有名な装丁家によるものでなく、無名な所有者による私家版ルリユールであったりすると、いくら綺麗であってもほとんど価値がない可能性があります。

品物そのものの状態の記載についても問題があるかもしれません。個人で出品している方は完全に検品できていない可能性があるため、ちょっとした汚れや糸のほつれ、ページの開き癖などは加味されていないことがあるかもしれません。さらに、こんな例はほとんどないですが、商品名で初版となっていても、奥付をみてみると初版ではなかったということもありました。

 

加えて、贋署名問題もあります。これについては自分で真贋を見分ける力をつけるしかないです。どうすれば身につくかといえば、確実性のある署名本を実際に目にして知見を深めるしかないと思います。

確実性のある署名本には次の2パターンあると思われます。①作者本人から直接サインしてもらったもの。②本自体がそもそも署名入りが前提であるもの。

①はまあ当然なのですが、よっぽどのことがなければ自身で入手できるチャンスは少ないです。公設の文学館の展示で見てみるのが手っ取り早いでしょうが、タイミングよく知りたい作家の直筆が展示されているとは限りません。
自分で手に取るとすれば、②を入手するのが手っ取り早いでしょうか。日本の古本屋やヤフオクでも書影が出ていることが多いので、それを頭の中に叩き込みましょう。私は古書展や実際の書店をぷらぷらする際に署名本が並んでいると、実際に手に取って実物の確らしさを再確認したりして勉強しています。

献呈先宛名がつくと信憑性が増しますが、献呈先が無名者であると価値は下がってしまう印象です。署名が記名のみとなると真贋の判定ができない場合は手を出さない方が無難です。しかし、落款があっても信用ができない場合がある(例えば、村上春樹)ので注意が必要です。

また、没後刊行のものに署名が入っているものが出品されていることもあります。論外だよなと思いますが、没年を知らない方は騙されたりするので、買おうと思う本の作者の生没年や大まかな年表くらいは覚えておくに越したことはありません。


それらを考慮した上で、購入して大丈夫そうだと判断したら、自分のなかで落とし所となる値段を設定し、入札してみましょう。この値段設定を怠ると、自分以外に本気で欲しいと思う人がいた場合に駆け引きが加熱しすぎて相場より相当高値までついてしまうことがあります。終わった後で振り返ってみたときに後悔することは必定です。
初期値段設定が相場より安いものは瑕疵があるなどちょっと怪しいかもしれません。しかし、初期設定が高いものだから完全に信用できるというのでもありません。そのあたりの駆け引きも非常に難しいところです。

 

以上のような次第で、実際には色々と気をつけなければいけないヤフオクですが、専門店でないと買えないようなものがオークションで拾える可能性があるのは面白いです。地方の古本屋がほぼ壊滅に近い状況になったため、地方の蒐集家の品物が古書市場に出ることなくリサイクル業者が買い取り出品している例が多く、とんでもないものが出ることも稀ではありません。

 

私はヤフオクで谷崎の「刺青」「悪魔」「春琴抄」の初版を手に入れましたが、今振り返ってみるとこの値段でこのコンディションのものを手にできたのは結構運が良かった気がします。それがためにやめられないですね。

私の昨年のヤフオクでの一番の掘り出し物は、長田弘の「吟遊詩人よ、起て!」。やばつい工房は冬澤未都彦が主催、ガリ版りで手製本を刊行しているため元々の部数が非常に少ないようです。


この項つづく