2023年は本の蒐集という点では非常に飛躍した一年でした。いや、 飛躍というのをどういう理解としてのということはありますが。
ここ一年ちょっとで買うものの傾向が変わってきました。 というのも、初版・ 初刊本に対する憧憬が増した影響がありそうです。 これまでは安かろう、 読めればよかろうという考えでやってきていて、 とりあえず読めれば問題はないということで、全集文庫刊本などの状態やエディションを問わずに集めてきました。しかし、とある本を初版本で読んだのをきっかけにして、 初刊本で読んでみるとそれはそれで面白いものだなと思い込んでし まったのを皮切りとして、ヤフオクで色々と手を出し始め、 それに加え、以下の要因も加わりました。
①とある書店での割引セール時にいいものが多く買えたこと
② 古書目録を取り寄せるようになりそこから注文をするようになった のと、 電話注文の際に古書店主と話すことでさらに知識が深められたこと
③知識が深められたことで目が肥えてきたことにより、 ヤフオクで勝負に出やすくなったこと
それぞれについて何回かに分けて少しずつ書こうと思います。
まず①については、現在は一応店名は伏せさせてください( いずれ公開にします)。 一昨年秋あたりから突発的にセールを繰り返しているといえばわか る方にはわかるかな。 始めの頃は値引率はそんなでもなかったのですが、 昨年春あたりに50% セールというとんでもない値引率となりました。この書店は、 元値は私はセールの始めのうちは高額限定本に限って手を出してい たものの、半額ならいい機会だと思い、 棚に残っていた三島由紀夫、安部公房、 上林暁初版本を思い切って何回かに分けて入手しました。「 岬にての物語(再版異装)」「宝石売買」「聖女」「夜の支度」「 終わりし道の標に」などの戦後早期のものや、「憂国映画版」、「 薔薇刑」初版などを手に入れました。上林は河盛好蔵宛署名本や「 半ドンの記憶」の限定本、山王書房から出た「上林暁書目」など。 そのおかげで上林本の蒐集が非常に捗りました。またその他に、「 性に目覚める頃」初版や井伏鱒二「河」や嘉村礒多「途上」 の署名入り、谷崎潤一郎の六部集、三浦哲郎の「木馬の騎手」、 加藤周一「三つの指輪」など色々な限定本も手に入れました。 また、 フランス本が主力商品であったためにフランス文学者が売りに来た のでしょうか、 渡辺一夫署名本やその他フランス文学者の署名入り本が多数ありま した。セールが進むにつれて、 文学書の目ぼしいところはどんどん減っていきましたが、 フランス文学者の本は人気がないからなのかわかりませんが、 結構最近まで残っていました。渡辺一夫は、 著作集を西部古書会館で一括揃いを買って「偶感集」 を読み始めて面白いと思い、そこから色々と蒐集を始めたので、 ちょうど良いタイミングでした。 それぞれの本について機会があればあげてみたいところです。
古本については在庫が一定するわけでなく、 一期一会の出会いになってしまうことがままあります。 機会を見つけたらそれを逸しないようにしなければならず、 そのためには多少の無理も必要かな、とつくづく思います。 他の古本者も同じようなことを語っていると思いますが、 昨年特に身に沁みて思いました。
この項続く