備忘録、的なもの

本との日常 購入日記その他

全集の端本について

先日のヤフオクにてこんな出品があった。

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/u1108965418

ほほう、なるほど。全巻揃っていない故のジャンク出品なのだろうけれど、23巻が入っているのは相当珍しい。というか出品者は気づかなかったのかな(まあ、そりゃそうか)。
安い値段で入手できるのであれば買うのはありだなと思って推移をみていたが、意外と結構な値段まで上がってしまったため見送ったのであった(残念?)。まあ、全巻持っているので別にいらないはずなんだけどね。こういうことをするからどんどん本が増え・・・。

まあそれは置いておいて、大岡昇平没後に筑摩書房から刊行された全集は全24巻(本巻23巻+別巻1)なのだが、その中で23巻が最後に刊行された。刊行時期もほかの23冊が1996年までに刊行されているのに、23巻のみ2003年刊行と数年経過してしてしまい、おそらく刊行部数がそもそも少なかったのであろう。現在日本の古本屋に出品されているものでも23巻のみ欠で全23巻としているものが多い。23巻のみビンテージ価格になってしまっている。

全集はそもそもの編集作業が大変であるうえ、完全を期そうとするとどうしても新発見資料だ、あれが見つからないから探さねば、などで最終刊行巻のみ時期が延び延びになることはままある。
大昔の全集黎明時代であればある程度刊行部数そのものが多いので後から入手するのにそこまで問題にならないものの、90年代後半以降で刊行された全集についてはそもそも出版不況で刊行部数が多くないし、刊行時期が飛んでしまって後からの入手が困難な巻が存在する全集というものがちらほらあるような気がする。

自分で今思いつくだけでも
未知谷の小沼丹全集の1巻
河出書房新社横光利一全集の補巻(これがな、どうしても見つからないのだ!)
冨山房のフォークナー全集の27巻

また、まだそこまで入手困難ではないものの、新潮社の安部公房全集ですらすでに何冊か重版未定が出始めている。三島ですらそのうちきっと重版未定のものが出ることであろう。

全集を揃いで買おうとすると結構値が張るので、端本でちまちま探していくと思ったより価格を抑えて全巻揃えることができるし、色々なところに出かけて探す楽しみもある。しかし、時間と運が必要なうえ、古本市に通い続ける体力は必要であるため、手っ取り早く揃えたいという方には全くもっておすすめはできない。
かく言う私自身も、安くそろえようと思って端本で買い始めたものの、未だにもってそろわない全集というのはいくつかある。上記横光利一全集以外に、川端康成の別巻2冊、武田泰淳全集増補版別巻2冊をここ10数年たっても未だに手に入れられていないのである(まだまだ年季が甘いのかもしれないが)。

揃い一括で買うのがいいか、ちまちま買うのがいいか、どちらがいいのかはわからない。ただ一つ言えることは、


本当に欲しいものは何があっても見つけた時に手に入れろ!


ということだけだ。

まあ、電子全集になってしまえばいつでも手に入るようになるし場所も取らないんだけれどね(しかし私にはどうも電子書籍は合わないのであるのよなあ・・・)。

最近の収穫

しばらく更新をさぼりっぱなしであったが、個人的に入手が困難だろうと思っていたもののうちの一つをようやく手に入れることができたので久しぶりに記事を。

「愛と性を巡る変奏」フジヰ画廊
もともとは鹿鳴荘から限定270部で出ていて、その後フジヰ画廊から100部限定で出、そのあと普及版として思潮社版が出ている。

同じ時期に「死と転生をめぐる変奏」も出ているが、同じように大阪フォルム画廊から少部数本→思潮社版の普及版という形で出ている。「死と転生」もじきに手に入りそうである。

あとは美蕾樹から出た「冬の組曲」であるが、これは元々の部数が10数部しかないため並みのことでは手に入らないだろう。
この間の七夕入札会で初めて現物を目にし、ある程度思い切った額まで入れてみることにしたが、駄目であった。落札額を聞いて、確実に聞かれていたなという印象を受けたため、あの場での駆け引きは中々難しいものだと思った。

とはいえ、いつどこで何が手に入るかわからないのが古本である。ひょんなことから入手できるかもしれないので、気長に待つしかないだろう。

死の影の下に(成瀬書房版)

成瀬書房刊 限定200部

ゾッキ本にもなっていたりしていわくつきの印象をお持ちの方もいるかもしれませんが、造本自体はきちんとしているため、私は成瀬書房本は好きです。作家の処女作でラインナップを作っていたようで、中村真一郎は当然「死の影の下に」になるわけです。スマートな造本です。

老木に花の

1998年5月30日初版刊行 集英社

装丁 菊池信義

装画 中島千波(外装「薄紅梅」、見返し「形態 素描Ⅰ/Ⅱ」)

目次 小序/巻の一/巻の二/巻の三/巻の四/巻の五/著作目録

初出 すばる1998年3月号

前年12月25日に亡くなってしまった後の最初の刊行本。

巻末に三坂剛氏による著作目録が掲載されていて、今のところ(2023年6月現在)これが一番網羅されている著作目録だと思う。

熱愛者

1960年5月10日初版刊行 講談社

装丁 三岸節子

初出 

帯もあるようですが、未見です。10ページほどの書評集も入っています(当時の講談社ではつける習わしだったのでしょうか。藤枝静男の「空気頭」でも同様のものを確認しています)。

私が一番最初に読んだ長編小説がこれでした。集英社から刊行されていた日本文学全集の中の一冊で、福永武彦とで一冊扱いになっていました。そこに収録されていた長編が「熱愛者」でした。その時は福永武彦の「廃市」の方が印象に残ってしまったのですが、大学に入ってから講談社文芸文庫で「死の影の下に」を見つけたり、池袋西口古本まつりで「中村真一郎小説集成」との運命的な邂逅を果たした結果、のめりこんでいくことになったのでした・・・。

色後庵漫筆

1990年12月25日初版刊行 白楽刊

装丁 久保内祐子

目次 山荘開き/昼寝のあとさき/炎暑のさなか/異国のたより/会とその始末/文債の山/さまざまな集まり/出会いと思い出/新刊書の到来/詩句との出会い/ふたつの催し/秋気来る

初出 信濃毎日新聞?(初出未確認)

私の所有本は署名入り。

附言にもある通り、信濃毎日新聞に連載されていた日記からの抜粋。「仮面と欲望」「王朝物語」の連載時期と重なっていて、その執筆についての記載もあり。それよりは交際の広さに驚かされる。軽井沢に移ってからも東京まで何往復しているのやら。